2021年7月30日金曜日

Tokyo2020 オリンピック総合馬術

 総合馬術は7/30,7/31に調教審査(馬場)からスタート。

そして8/1の朝7:45からが海の森の特設コースが注目の耐久審査(クロスカントリー)、

8/2が余力審査の二走(障害)です。メダルのかかる決勝は午後8:45から。

凍結精液によって日本で生まれたコンテンドロの子(遠野)


強いのはイギリス

これにプラスドイツフランスアイルランドといったヨーロッパ勢 vs クロスカントリーに強いオセアニアのニュージーランドオーストラリア vs カウボーイの国アメリカ vs 2018世界選手権団体4位の日本

という構図が見どころ。

予選の馬場・野外・障害を終えると上位25名が決勝の障害2回目に進むのですが、疲れてフラフラになりながらもライダーとの信頼関係を頼りに障害をクリアしていく姿には涙涙で、完走した全人馬に感動するでしょう。

他の馬術競技と違いクロスカントリーでの反抗3回や落馬、転倒による失権が珍しくないことや、途中の獣医師による馬体審査(ホースインスペクション)での失権、疲れで最終日の障害が飛べなくなっての失権などもあり、特に団体戦は3人馬が完走しスコアをそろえるだけでも難しいのが総合馬術です。

運や天を味方につければ下克上も十分あり得るだけに、日本も最もメダルに近いのが総合馬術だろうとここ数年総合馬術の強化に特別力を入れています。

頑張ってほしいですね。

総合馬術に出る馬は当然3種目ともこなせるオールラウンダーでなければいけません。この点に関してはフランスの品種「セルフランセ」が強いようです。

フランス代表がセルフランセで揃えてきているだけでなく、馬産大国ドイツもセルフランセ(フランス産&ドイツ産)での出場になります。

特にセルフランセのライセンスももっているGFE(フランス育種協会?)の種馬CONTENDRO GFEの子がバランス抜群。

CONTENDROの子チップムンク Chipmunk(ドイツ)やキャト60 CATO60(スウェーデン※セルフランセではない)は優勝候補です。馬場にもコンテストロDB KontestroDB(フィンランド※同)が、障害飛越にもムンバイ Mumbai(ドイツ※同)が出場予定でオールランダーぶりがうかがえます。

また、コンテンドロと同じくフランスからの凍結精液の輸入が(たぶん)行われているディアマン・ドゥ・セミリDiamant de Semillyの子ヴィアマン・デュ・マッツViamant Du Matz(ドイツ)とトレドデカーサーToledo de Kerser(イギリス)も優勝候補です。

Diamant de Semillyは後継種牡馬や近親種牡馬も多数おり、今後の国産のHARAS DE SEMILLYのスタリオン産駒に期待です。


2021年7月24日土曜日

東京オリンピック開幕 馬場馬術は7/24~7/28

 取り急ぎ馬場馬術競技の見どころを!

まず間違いないのがドイツ強し。

予選の最後(7/25 21:51)に登場するイザベル・ベルトIsabell Werthは個人団体合わせて10個のオリンピックメダルを持っており、今大会でも2018年世界選手権で優勝しているベラローズⅡ(ウエストファーレン種)とのコンビで優勝最有力候補です。

ドイツはイェシカ・フォンブレドウ=ベルンドルJessica Von Bredow-Werndl &TSF ダレラ Bb(トラケナー種)が世界ランキング2位、ドロテー・シュナイダーDorothee SCHNEIDER &ショータイムFRH(ハノーファー種)も世界ランキング4位と上位独占(1位と3位がイザベルベルト)という圧倒的強さ。全員が優勝候補です。

馬もばっちりドイツ産で揃えていてたまりませんね。

これに対抗するのがオリンピック馬場個人2連覇中のイギリスのシャーロット・ドュジャルダンCharlotte Dujardinですが、2連覇を達成し馬場馬術グランプリフリースタイルの世界最高得点(94点台)をだしたことのあるヴァレグロは既に引退しており、今大会は10歳と若いジオ(KWPNオランダ温血種)とのコンビで爆発力に期待。

またヴァレグロの前の世界最高得点をマークしていたオランダのエドワルト・ハルEdward Galは伝説の馬場馬トーティラスの子で9歳のトータルUS(ハノーファー種)との出場ということで楽しみです。

他にもデンマークのカタリーヌ・ドフールCathrine Dufour&ボヘミアン(ウエストファーレン種)やアメリカのステファン・ピーターズSteffen Peters&サッペンカスパー(KWPN)もメダルを狙えます。

団体もこれまでに出てきた国がメダル候補と思います。

他には、選手の年齢が40代、50代がざらにいる馬場馬術の中で20代と30代で団体チームを組んでいるフランスは応援したくなりますね。


さらに日本も実はメダルを狙っています。というのもJRAが本気です。

さすが天下のJRA様。2017年2018年とそれぞれ8億円もの強化費を投じ、オリンピック用の馬の購入費などに充てています。日本サッカー協会のチーム活動費が男女合わせて年間3億円と言いますからすごい額です。

というのも、高級品の代名詞のようなサラブレッド競走馬ですが、それよりもさらに希少かつ貴重なのが優秀な馬術競技馬です。優秀な馬術競技馬の育成には10年もの時間が必要なうえに、相棒である愛馬をそう簡単に売ってはくれないものです。また、優秀な馬は優秀な教官にもなり、選手のレベルアップにもつながります。

値段は非公表ということですが、JRAは金メダリストのシャーロット・ドュジャルダンが調教し、国際大会ロイヤルウィンザーホースショーでグランプリ優勝経験もあるバローロ号を購入してJRA職員とともに海外を拠点として武者修行を重ねさせました。

これだけでもJRAのヤバさがわかりますが、今大会ではバローロ号は予備馬です。

出場するのはイギリスやデンマークで調教・競技されてきたルードウィッヒ・デル・ソンネンコニッヒ2(オルデンブルグ種)とフィンランド代表として本大会にも出場するヘンリー・ルオステの調教馬ウラカン10(デンマーク温血種)がJRA馬事公苑所属の佐渡 一毅北原 広之とともに。やはり本大会にも出場するオーストラリアのシモーン・ピアースSimone Pearceとともにグランプリ競技に出ていたスコラリ4(ハノーファー種)がアイリッシュアラン乗馬学校の林伸伍とともに。

佐渡選手が4番目の演技(7/24 17:27)で先陣を切り、2日目は国際大会優勝経験もある北原選手、名門明治大学出身で全日本選手権を3度制している林選手が登場。7/27の団体決勝、7/28の個人決勝フリースタイルとメダルを狙います。

馬場馬術競技は始まってしまえばそれほど波乱のおこらない競技といえますが、何年もかけて育てた馬を大一番の舞台に無事に送り出すというだけでも大変なことです。ましてやヨーロッパからの飛行機での大移動、新型コロナウイルス対策での不便さ、東京の夏の暑さが重なっては何が起こるかわかりません。

全人馬が健康に最高のパフォーマンスが出せるように祈りますが、日本選手が地元開催の利を活かして上位に食い込んでくることも期待しています(といっても馬はヨーロッパからの輸送ですが)。

ちなみにフィンランド代表のヘンリー・ルオステHenri Ruoste選手と組むコンテストロDB(ベルギー温血種)は凍結精液で日本でも子供が生まれているコンテンドロgfeの子です。障害や総合だけでなく馬場もいけるんですね。

さらにショータイムFRHやスコラリ4、フランス代表モーガン・バルバンソンMorgan Barbançon選手と組むサードナーホールⅡOLDはサンドロヒットという大種牡馬の子です。同じくサンドロヒットを父に持つソリマンドゥハスの凍結精液も日本で供用されていますので、フランス産の凍結精液の輸入開始に伴って日本でもオリンピッククラスの血統の馬が手に入るようになりました。

夢は国産馬でのオリンピック出場ですね。


参考 五輪強化費、サッカーの倍以上の「マイナー競技」とは?:朝日新聞