2018年1月23日火曜日

冬の宮古→盛岡R106完走編

宮古市から岩手県庁のあたりに行く用事があったのでR106を完走することにした。

スタートの前に読者の皆様にまず申し上げたいのはこの道の歴史である。
この道の始まりは古く、江戸時代前期から盛岡城と宮古の港をつなぐ道として使われていた宮古街道(閉伊街道)を今も踏襲している。
宮古を含む下閉伊郡はリアス式海岸特有の険しい海岸線と岩手県を縦走する北上山地に囲まれ今も昔も陸の孤島と呼ばれる。そのなかで、東は閉伊川沿いに西は簗川沿いに北上山地を横断する宮古街道はこの地域の生命線である。この道の改修に尽力し三陸を飢饉から救った鞭牛和尚は宮古市民では知らない者のいない英雄となっており、宮古市民は決して呼び捨てでは呼ばず、鞭牛さんとか鞭牛様と呼ぶ。銅像も建てる。それほどに重要な道である。

そして、鞭牛和尚だけではない。この道は400年の歴史のなかでいつの時も難所を少しでも減らそうとその時代時代の人々が道を切り開いてきている。生きた道なのである。その成長は東日本大震災からの復興や2年続けての岩手県への台風直撃による閉伊川の氾濫の修繕を行っている現在、ものすごい勢いとなっている。
今回の完走の動機は、この時々刻々と変わっていく道の今を心に留めておきたいという思いである。

スタートはR45を北上し宮古大橋を渡り右折したところ。市役所の周りをぐるっと回って宮古大橋の下をくぐって新南大橋という陸橋を上るという凝った造りで始まる。
国道といっても宮古の中心街を抜けてしまうともうほとんど交差点のない一本道となる。信号も序盤に数個あるが、その後は盛岡の町までの間は3つくらいしかなく、さらにそれらもほとんどが朝6時前は点滅信号なので、早朝ならほぼノンストップである(改修で片側交互交通になっている場所は工事用の臨時信号があるが)。

片側相互交通で停止中
左は閉伊川、右は山という景色が続く

宮古市川井村に入る
だんだん山が深くなっていく

R106前半のベストポイントは茂市のゆったり館の看板から橋橋トンネル橋トンネル橋トンネルと続き長めの直線に出るゾーン。直線と比較的急な連続カーブが交互に続く区間で、ここのコース取りがビシッと決まると清々しい気分になれる。途中洪水で流されたままの橋が左に、変な形のキノコの看板が右に見え、最後の直線では警察がネズミ捕りしている。ちなみにこの橋とトンネルの連続は蛇行した川の真ん中を突っ切っていくからに他ならない。川は右へ左へとせわしなく流れていく。
このように、どんどん橋とトンネルが作られて所々バイパスができているが、基本は川沿い、それも川と山に挟まれたわずかな部分を造成して道路にしてあるので自然の地形に合わせて大小さまざまなカーブが連続する。加えて通勤ラッシュのほんの少し前に出発したので遅い土砂を積んだトラックさえ追い越していけばビュンビュン走っていける。穴場の国道である。特に欧州車で走れば街乗りではオーバースペックな部分も使えて本当に楽しいのだが落とし穴がぽっかりと口を開けているかもしれないので注意。
というのもR106の死亡事故件数は全国でもトップクラス(宮古警察署の資料参照)。後で知ったことだが壊れた橋のすぐ手前のところでこの前々日にトラックがガードレールを突き破って川に落ち、この日もまだ落ちたままになっていたらしい。

門馬トンネル
トンネルの中にガードレールがあるのを初めて見た

門馬トンネルを無事通過
川も上流っぽくなってくる

そしてR106のなかでも現代の難所と恐れられているのが門馬トンネルである(土木センターの資料参照)。微妙な傾斜と先の見えないカーブ、路面凍結のしやすさが事故多発の原因ではないかと言われているが、トンネルのすぐ脇で列車の脱線事故が起こるなど、どうも道だけのせいでなくプラスアルファ事故を引き寄せるような何かがこの地にはあるのかもしれない。
門馬トンネルを含む平津戸地区およびこの後の難所・区界地区についても数年後にはバイパストンネルが開通し通ることもなくなるようである。ここ数年の工事の進捗はすさまじいものがある。400年前の道と30年後の道と2時間の道程に思いをはせながら走るのも乙である。
さらに、並行する閉伊川も上流へと進んでいくにつれ川幅が狭く、石が大きくなっていくなどその顔を変えていく。川を河口から水源まで遡っていくというのは自分の原点を探す旅のようでもありロマンチックかもしれない。

道中いたるところでトンネル工事中

道の駅区界
ここもバイパスができれば通らなくなる

さて、門馬付近の急カーブの連続を過ぎるとだんだんなだらかになってくる。区界高原である。ここにはオービスと道の駅が整備されている。道の駅のフライドポテトはおいしくて大盛。
区界のトンネルの入り口が宮古市と盛岡市の境界でありR106の頂上である。標高は740mほど。トンネルを抜けると残りはひたすら下り坂が続く。70kmかけて上った高さを20kmで下りる。盛岡側の山場はまさにここで、すり鉢状の谷をらせんを描きながら降りてくる。
下の写真で説明すると、右奥が宮古方面で、高い位置にある橋を左に駆け抜けると左回りにぐるっと撮影地点までくる。次は低いほうの橋を抜けて右回りに半回転する。サーキットさながらである。

着雪してよく見えないが「君死に給ふことなかれ」とかかれた恐怖看板

R106名物のらせん山下り

この先は新道梁川道路と自動車専用道都南川目道路が田ノ沢ICまで既に開通している。梁川ダムが建設中で、旧道はダム湖の下に沈んでしまうそうである。今なら山と山の間にロープを張った索道というケーブルクレーン(?)を見ることができる。

梁川道路。かなりレアなmitoのポジションランプのみ点灯

ダム工事中。旧道はダムの下に眠ることになる。

田ノ沢ICから手代森ICの間はまだ工事中なので盛岡競馬場や盛岡動物園の近くの道を通って、渋滞でおなじみの茶畑交差点へ。

岩手山が見えてきたらゴールは近い。この先茶畑交差点

チャグチャグうまっこのゴール地点盛岡八幡宮を通過

岩手銀行赤レンガ館発見、左奥は盛岡城跡公園

公会堂裏の駐車場でゴール

積雪時期や桜の開花期や紅葉シーズンなどは標高に応じて変わる景色も楽しむことができる。
全長100km弱だが、実際の距離以上に充実感を感じるのは時間と季節を飛び越え、川の一生をなぞってきたからなのだろう。

おまけ
朝ごはんは近くのお店焼き立てパンpetite forêt(プティッツフォレ・小さい森)
栗アンパン90円

ランチは山田イタリアンrocare ascia(ロカーレアーシャ・斧食堂?)
魚料理のドルチェセットで1280円

県庁の向かいのイタリア国旗が目印


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