2017年10月21日土曜日

仔馬臍ヘルニアのゴムバンド非観血的整復


三陸でマツタケが取れるこの時期は仔馬のヘソが取れるシーズンでもある。
といってもヘソがにょきにょき出てきたら困ってしまう。ここで取れるヘソはもともとの出べそで6か月齢になっても自然治癒しない還納性で無疼痛のもの[1]だ。
道具は羊や豚の去勢・断尾に使われるイージーカットとかイラストレーターとかいう名前のものを流用する。大手ネット通販や酪農用品サイトなどで売っている。トップの写真がゴムリングをつけた直後のもの。このヘルニア輪は3指幅で野球ボール大の出べそだった。

2~3週間後(水で洗ったところ)

3~4週間後

4~5週間後

瘢痕もしだいに消失してきれいになる。

この方法は人によって鎮静下立位でやったり[1]、全身麻酔下仰臥位でやったり[2]するが、誤ってヘルニア嚢内の腸管を巻き込まないようにするには熟練者以外は仰臥位がベストだろう。また、ヘルニア輪の適応範囲も3指幅以上[1]とするものや、7cm未満[3]とするものなどある。いずれにしてもゴムバンドでの整復に危険を感じたら外科手術に切り替えるべきだ。
この方法は見た目の乱暴さそのままに多くのリスクを含んでいる。周囲の皮膚の感染や創部からの腹部の離開、潜在的で重大な腹腔内感染の危険がある[2]。適切な環境と手慣れた術者がいれば観血的整復(外科手術)を行ったほうがリスクが低いだろう。しかし、そんな環境はどこにでもあるわけではないし、なによりゴムバンドによる非観血的整復の方が経済的である。

参考HP
[1]北の研究室から:当歳馬の臍ヘルニア(JRA日高育成牧場)http://www.equinst.go.jp/JP/kita/heya1207.html
[2]Battle of bulge: dealing with umbilical hernias (horse talk)
https://www.horsetalk.co.nz/2012/12/02/battle-of-the-bulge-dealing-with-umbilical-hernias/
[3]馬獣医のよもやま話:出べそ(臍ヘルニア)について(日高軽協だより)http://www.hba.or.jp/yomoyama/yobmoyama052.pdf

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