2018年のアジア大会・世界選手権パラにおける馬場・障害・総合での日本勢の活躍は、東京オリンピック・パラリンピックにむけて期待が膨らむものだった。しかし、まだまだ馬術が日本に浸透しているとは言えない。
何より競技馬の生産が足りない。
生産頭数も足りなければ生産技術も足りないのだが、今後変わっていくはずだ。
平成29年にフランスからの凍結精液の輸入が解禁された。牛の品種改良を見ればわかるように凍結精液による人工授精(と受精卵移植)が改良の効率化に与える影響は大きい。
現在は日本でごくごく一部(2か所?)でしか作られていない凍結精液だが、今後普及していくだろうと思う。
人工授精の精液注入方法については前回の投稿を参照。
馬精液のストロー凍結方法は日本家畜人工授精師協会の本によると
グルコース、ラクトース、ラフィノース、クエン酸Na、第2リン酸Na、酒石酸カリNaの水溶液に
卵黄を添加した液の上澄みにペニシリンGカリウムとストレプトマイシンを添加した希釈液(HF-20-A液)を精液に加えた後、1500rpmで遠沈させ上澄みを除去。
沈殿精子に再び希釈液を加え5℃に冷却したら、HF-20-A液にグリセリン10%を添加した液(HF-20-B液)等量を点滴などで徐々に添加しストロー(牛用)に封入する。
ストローは液体窒素液面上3~5cmの位置において凍結させる。
等々書かれているが、今後改良されていくと思うので詳細は割愛。
凍結精液ストローの融解法も同じ本に
「35~40℃の水にストローを投入して速やかに融解する。1授精当たり6~10ストロー分の精液を融解し、これに30℃に温めたHF-20-A液を加えて20ml前後にして授精に供する。」
と載っているが、おそらく今後は牛用のモ5号やYTガンもしくはIMVやminitubeで扱っているような深部注入カテーテルに融解したストローをそのまま入れる方式にかわっていくと思う。ちなみに融解後の希釈液は岩手県ではスーパーマーケットの牛乳コーナーに普通に売られている小岩井の無脂肪牛乳でも全然大丈夫。他県では手に入れにくいらしいが。
凍結精液の受胎率向上には、凍結手技や授精手技の向上に加え、そもそも個体差が大きいとされる精液の耐凍能による種雄馬の選別が必要と考えられ、そう簡単に普及させられる代物ではないのだが、馬関係者の一層の奮起によって競技馬生産を欧米並みに引き上げるチャンスを今掴むべきだろう。
参考文献
馬人工授精マニュアル 日本家畜人工授精師協会
Allen WR, Antczak DF : Reproduction and modern breeding technologies in the mare, The Genetics of the Horse, Bowling AT , Ruvinsky A,307-342, CABI, Cambridge(2000)
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