モータリゼーション前の日本では、馬は暮らしの一部であった。馬は人にとってなくてはならないものであったし、あって当たり前のものであった。
このあたりのことは今となっては愛蔵の復刻版岩波写真文庫 馬 を読み、ため息をつきながら思いを馳せるしかないのだが、日本のモータリゼーションは1950年代なのでわずか60年前であるのがなによりも驚きだ。
私が高校生の頃は、いつか石油がなくなれば馬と暮らす時代が再来すると思っていたが、内燃機関の自動車が時代遅れになりつつある現状では人間社会に後戻りはないようにも思われる。
1904年(明治37年)から1958年(昭和33年)まで家畜の飼料やミルク缶を小岩井農場内各所(広い!)や小岩井駅まで運搬するのに馬車鉄道が使われていた。それを復元したものが現在トロ馬車の愛称(トロッコ馬車の略?トロトロ進むから?)で親しまれている。
大人500円、子供400円
1周は5分くらいか?きれいなコスモス畑と羊の放牧が見れるかと思ったがコスモスは1分咲き、羊は遠くにいた。
乗り場、人が集まると発車する
馬のぱかぱかと鉄道のとろとろの融合!
アブ除けの服を着ていた
枕木の間に馬の蹄の跡
今までに経験したことのない不思議な乗り心地!
音、揺れ、景色、臭い、すべて初体験でドキドキする。
まきば園は公園のようなところなので、小岩井農場に来たのに牛を見ずに帰られる方も多い。牛はまきば園にはおらず、道路を挟んで向かいの上丸牛舎にいる。他の場所にもいるが一般客が見学できるのは上丸牛舎だけ。
昭和9年(1934年)に建てられた一号牛舎は今も搾乳牛が飼われているが、さすがに手搾りではない。タイストール形式でパイプラインミルカーで搾られている。搾乳はパフォーマンスではなく、搾られた牛乳は商品となる。分娩舎や哺乳・育成舎も文化財。消毒や使い勝手等大変な思いをされていると思う。建物自体が貴重なものなのはもちろんだが、それだけでなく、その建物で酪農が営まれているということに価値があるように思った。
小岩井農場は観光施設であって観光施設でない不思議な場所。
現在と過去が融合するあたりに岩手の懐の深さを感じる。
ちなみに、牛舎内は覗く程度しか見られないが牛の体重測定や削蹄をしていた秤量剪蹄室は中に入ることができる。壁に殴り書きされた削蹄師の覚え書きのようなものや昔の秤が見られて面白い。