自動運転よりもMT車を、自動車よりも馬を愛でるblog
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2023年11月5日日曜日

こんなのあり?な撮影者たち

いきなりカーメタを覚えようと思ってもただの丸暗記は苦痛でしかないタイプで無理なのでまずはおもしろメタから。


線路から見る牛とお姉さん カンボジア
電車映ってないけどトロッコ的なの?
インドやポルトガルは電車も映ってるらしい

にひかれて マダガスカル


ミッドウェー島滑走路 さすがに飛行機についてるわけではなくトレッカーみたい


鳥に囲まれたトレッカー ミッドウェー島


スノーモービル アンドラの有名なスキー場 グランバリラ

カナダでは海の上をスノーモービルで てか銃持ってる

ラクダ! UAE

ガラパゴスで周遊 船は各国にあるけど旗でわかりますね

アルゼンチンで高原を 

2020年8月16日日曜日

便秘疝と鼻カテ


馬の疝痛のほとんどは便秘疝だと言われている。

風気疝や寄生虫疝、痙攣疝といったもの(そもそもこの分類の仕方にも再考の余地がある)と鑑別されることなく治ったのかもしれないが、
実際、フルニキシン1mg/kg(牛の半分量)の静脈内投与で8割方の疝痛は治ってくれる。

鑑別のための検査は
直腸検査:枠場もしくは蹴られる覚悟が必要
エコー検査&内視鏡検査:お高い装置が必要
と、設備の整った牧場でなければ鑑別診断のハードルは高い。

それでも予後判定には鑑別診断と病態の把握が大切。
だからせめて、フルニキシンを投与しても疼痛が治まらないときは検査と治療を兼ねて鼻カテーテル(上画像)を入れてみてほしい。
イレウスが上部消化管であれば胃液の逆流が見られる。この場合は過食や十二指腸炎あたりが疑われる。胃液を抜くだけでスッキリすることもあるし、経口薬や下剤の投与にも鼻カテーテルは役に立つ。

カテーテルは海外の馬用のものが使い勝手がいいそうだが、ホームセンターの計り売りゴムホースなら安価でいろいろな太さ・長さのものを揃えやすい。
太すぎると鼻血が大量にでるし、柔らかすぎると噴門を通り抜けられない。
鼻カテ挿入の練習は失敗してもあんまり鼻血の出ない牛でやってもらいたい。
カテーテルが気管に入ってしまうときは首の角度を調整して何度かトライする。息を吹き込むことはできるが吸い込めないのが食道。

ついにでた!

便秘疝のときは流動パラフィンで少しテカテカしたウンコが実に神々しく見える。

外科手術の必要な変位疝や捻転疝なのか、10L程度の輸液と下剤で治る便秘疝なのかの診断には直腸検査が必要。
おしりから手を突っ込むと初めは宇宙みたいに感じるが、だんだん下図のように感じられてくるはず。

便秘疝と診断できればモサプリドクエン酸も使うことができる。

2020年6月5日金曜日

Regional Limb Perfusion (肢端局所灌流 : RLP)

「家畜共済 薬効別薬価基準表 令和2年度版」に静脈内灌流の項目が新設された。

B点150, A点69
感染症に対する治療の目的で行った場合とする

とある
効果について農水省のお墨付きがついて保険がきくようになったということか?

俗に言うリムパーフュージョン(RLP) のことで、駆血帯の遠位の静脈に薬剤を入れることにより、ターゲットとなる部分(肢端)の薬剤濃度を上げる。
抗菌剤や局所麻酔薬、グリコサミノグリカンなどを全身投与よりも効果的に使うことができる。ヒトでは抗がん剤で行われることがあるらしい。
ターゲットとする部位以外の薬物濃度を下げられると思われるので、副作用の軽減も期待できる。
外傷や手術時の止血作用もあるという噂も。
駆血帯(筋トレ用ゴムチューブなど)と翼状針、アスレチックテープを使う。
最後に駆血帯を外すときに蹴るやつがたまにいるので要注意。

個人的な感想としては、エクセネル全身投与で治らない馬のフレグモーネにマルボシルでRLPをやると効果は抜群だ。おとなしい(弱ってる)馬なら後肢でもできる。
牛は関節炎や関節周囲炎に効きそう。

しかし、問題もある。厳密に家畜共済保険適用について考えるなら薬の効能書きに「静脈投与」と「関節炎・フレグモーネ的な適応症」が必要だが、おそらく該当するのは牛はOTC、馬はサルファ剤しかない。
せっかく手間をかけてやるのだからセフェム系やキノロン系、アミノグリコシド系を使いたいのだが・・・。
まあ点数が設定されたというだけでもありがたいところではある。

参考文献
Adams and Stashak's Lameness in Horses


Current Therapy in Equine Medicine
chapter 117
Regional Limb Perfusion with Antimicrobials
JOEL LUGO





2020年5月31日日曜日

公共牧野

荒川高原牧野では牛や馬の放牧が行われている。
牧野と言ってもほぼ山。


くわえて広大な放牧場のなかのどこに馬がいるか一般人にはわからないのでドライブコースとしても有名だが牛や馬を見れる保証はない。

しかし、この日は月に一度の牧野検診。
看守たちが、点呼(?)や妊娠鑑定、怪我がないかの確認、隣の牧区への移動などするので馬が集められている。



手前の山の間からちらりと雪の残っているのが見えるのが早池峰山。

1時間も走ると隣の高清水牧野に行くこともできる。
こちらは人里に近く、展望台からは田園風景が眺められる。



路面はまずまず整備されていてアルファロメオ156GTAでも上れるが、途中道路に穴があいていたり、大きめの枝が落ちていたりで危険なのでスピードは出せない。それでも3速でもりもり上ると楽しい。



2020年3月16日月曜日

骨折内固定君・ラグスクリュー


骨折イメトレ道具・骨折内固定君を作成した。
クオリティについては薄目で見ることで対応願いたい。
第一弾としてラグスクリュー法のイメトレ。
どんな時に使う方法かというと骨片を圧着させるときに使う。

例えば第三中足骨外顆縦骨折


子供のころ工作でふたつの木片をくっつけたいと思い並べた状態でネジを貫通させたことがある。
これが全然うまくいかない。ふたつがつながりはするのだが、ちゃんと固定されない。それはこの時使っていたネジが「全ネジ」だったためだった。
木片を固定させるのを「締結」というらしいが、半ネジを使うのが一般的だ。ネジの全長にわたってネジ山が切ってあるのが全ネジ。下から途中までしかネジ山を切っていないのが半ネジ。
ネジの部分で木にしがみつきつつ、ネジ入れることで圧力がかかる訳だが、全ネジではネジ頭と手前の木片の間に圧がかかってネジ頭がめり込んでいくだけで、木片同士に圧はかからない。
ネジ山のない部分によって手前の木片にネジがしがみつかなくなって初めてネジ頭がかける圧が手前の木片を奥の木片に押し付ける力になる。
説明が長くなったが、とにかくやってみればわかる。
参照:DIYを楽しもう! コーススレッド全ネジと半ネジの違い!(間違えると致命的!)


骨折内固定の場合はスクリュー4.5なら奥のドリルは3.2で


しかし、ある程度規格が決まっている木材とは違い、骨折線の深さはいろいろある。

そのため半ネジを使おうと思ったら様々な全長&ネジ山長の半ネジを揃えなくてはならず大赤字になってしまう。
そこで使うのがラグスクリュー法。

具体的には直径4.5mmのスクリュー(全ネジ)を使うとすれば、手前の骨片に4.5ドリルで穴をあけて(タップ切らない)、奥の骨に3.2ドリルで穴あけ&4.5タップ切りをすれば、ネジは手前の骨片にはネジ山が食い込まず、奥の骨にだけネジ山が効くので、半ネジと同じように骨片を圧をかけて固定できる。

骨折線に垂直にスクリューを入れることで変位なく正しい方向に圧をかけることができる。

詳細はAO Principles of Equine Osteosynthesisや新小動物骨折内固定マニュアルを参照。


って、本読んでたらフォルクスワーゲン・ビートルの古いのでてきた(VW typ 1)。
なにしてんの?大丈夫?って思ったら、下の黒いのが骨で、骨は車をのせられるほど硬いよってイラストだった。
お前ホントにそれやったの?っていう感想しか出てこない。


2020年2月8日土曜日

繁殖に使えるツボ

牛においては改めて市民権を得つつあるお灸。
というのも、ドップラー機能のついた超音波診断装置の普及に伴い、東洋(獣)医学と西洋(獣)医学の間の壁が崩れつつある。

ドップラー機能とは超音波を出すプローブを当てるだけで体の中の液体が流れる量や方向がわかるというもの。家畜においては始めは心臓の奇形くらいしか使い道がないかと思っていたが、ここのところ抹消の血流量の測定で注目されている。
要するに、いままで何となく感覚的に効きそうぐらいな根拠しかなかった「お灸」が、西洋医学的にも卵巣や子宮動脈の血流量の増加という形で効果が立証されるようになってきた。(※注 西洋医学とは違った形になるが、東洋医学にも理論や根拠はある)

中医学・中獣医学は実は欧米でもかなり認められていて、Traditional Chinese Medicine(TCM)という分野があり、大学で鍼灸や漢方の授業も行われている。批判ももちろんあるが、全くの出鱈目だというよりは玉石混交だから気をつけろというニュアンスが多いように思う。

お灸を据える「ツボ」は中医学でいうところの経穴(気血栄衛の通り道)なわけだが、これも筋膜の歪みや神経の集中する地点として説明できるとするトリガーポイント理論などで西洋医学と融合しつつあるとかないとか。
詳しくは以下を参照

参考文献
三浦亮太朗, et al."お灸がウシの黄体血流および血中プロジェステロン濃度に与える影響."   日本受精卵移植関連合同研究会 京都大会 2017年9月20日



ま、効く効かないは東洋医学に限らず西洋医学でも車のチューンナップでもなんでも自己責任で判断を。


さて、前置きが長くなったが、今回言いたいことは簡潔だ。
お灸をしたら不妊症で繁殖をあきらめられそうになっていた一頭の馬が妊娠した。

お灸をした「から」孕んだのかどうかは置いておいて、事実として興味深い。


使ったツボは百会、陽関、腰膁、雁翅。この年最初の種付けの不受胎が分かった時から排卵するまでに3回施灸した。

以下 中国獣医針灸療法 馬針編(岩手文永堂 1976) より

また、手技図解 家畜外科診療(養賢堂 1963)には
雁翅:左右の腸骨外角を結ぶ線で背正中線より1/3側方の部にある。不妊症への通電療法。
陽関:第4・5腰椎棘突起間にある。すなわち百会穴前方約9.0cmにあたる。腰股部リウマチ。
とある

黄体だけでなく卵胞周囲にも血流があり、排卵や妊娠に少なからず影響を及ぼしていると思われる。詳しくは"卵胞オタク"と言われているOJ Ginther先生の論文を読んで勉強中。
ドップラーのついてるポータブルエコーがもうちょっと安くなれば自分でも調べるんだけどなあ。

参考文献
宮本明夫, and 大谷昌之. "カラードップラー超音波画像診断装置を用いたウシ卵胞の発育, 閉鎖過程の血流像の動態." (2003).

2020年1月3日金曜日

サラブレッドの胸にできた滑液嚢腫?CEH?

我々が普段「血豆」とか「たんこぶ」とか呼んでいるものを皮下血腫という。
打撲による皮下の出血だ。

馬でも珍しいことではなく、蹴られたりぶつけたりすることで臀部や胸前に波動感のある膨らみができる。馬の場合は意外と自然治癒しないので、3日ほどおいて切開して中の水(血清)を出すことが多い[1]。小さいものなら切開後は放置でも治る。

今回もそうだと思ったが、胸のそれが切開後1週間たっても小さくならない、創がふさがらない。
馬具(ネックストレッチャー?)の当たるところだから早く治してもらわないと困るんだよね。という冷たい視線を浴びながら改めて切開部に指を入れて精査する。
化膿したわけではなさそうだが、感触が明らかに皮下織や筋肉ではない。指をねじ込んでも破れない線維化した袋だとわかる。

こんな症例ははじめてなのだが、不思議な既視感がある。はて。
ちょっと考えさせてと思ったが、厩務員はいいや、限界だ押すねという顔。

・・・・

偶然か、運命なのか。ちょうど数日前に見たブログの記事だ。シェパードのコラム「膝瘤ってなんですの~?」[2]と同じだ。

保存療法で静かに暮らしたいのだが摘出しかないと判断。

袋の周囲をど根性で鈍性剥離すること小一時間
鎮静と局所浸潤麻酔だけで我慢してくれる馬で本当によかった

袋を摘出。
やはり牛の膝瘤[2]に似ているが。

牛の膝瘤は「慢性皮下粘液嚢腫」とか「滑液嚢腫」とか呼ばれている。関節や筋の近くにあり、その動きを滑らかにする働きをもつ滑液嚢(滑液包)の非感染性慢性炎症と考えられる。血腫ではなく、腱鞘炎の仲間と言える。
だが胸に滑液嚢があるだろうか。鎖骨のあったあたりに近いと言えなくもないし、外反母趾の突出部などの病的な状態の挫創部位に新たに形成されることもあるようなので、滑液嚢がある可能性は否定できないが、馬でそんな話は聞いたことがない。

前述の通り、馬具で繰り返し擦れる場所だと言うことなのでやはり血腫かとも思う。調べると、血腫が線維芽細胞で被嚢化されることがヒトであるらしい。Chronic expanding hematoma (CEH) とよばれ、顔面[3]やcalf[4]で報告されている。calfなんて言うから獣医領域にも浸透しているのかと思いきやふくろはぎのことをcalfと言うらしい。肉芽の袋と肉芽からの持続的な出血によりジョジョに拡大するのが特徴の血腫ということだ。

摘出した袋を組織標本にして滑膜由来のものかどうか調べれば診断がつきそうに思うが病理検査には出していないのでわからないままだ。

この後は、一部皮膚を縫うだけですぐに治ったので摘出が正解ではあるようだ。

参考文献


2019年9月20日金曜日

馬の薬 一覧表

7並べが嫌いだ。
トランプの楽しさはババ抜きやポーカーのようなドキドキ感にあると思うのだが、7並べには手持ちのカードはたくさんあるのに、使えるカードはわずかしかないという苛立ちしか感じない。

同じように馬の薬はなぜこんなに少ないのだと憤慨することが度々ある。
なので一覧表など簡単に作れると思った。
ところがどっこい、途中何度もやめたくなるほど大変だった。それでもなんとかほぼすべてを網羅した一覧表ができた。

大雑把に言って馬は薬の副作用が強く出やすい傾向にある。同じ薬でも用量が牛の半分だったり、使うと致死的な下痢を引き起こす抗菌剤があったりする。
牛の場合、薬を打ったせいで余計に牛の体調が悪くなるという心配をほとんどしない。大腸菌性乳房炎のエンドトキシンショックや創傷性第二胃炎のときに消化管運動亢進薬を打たないようにするぐらいではなかろうか。

この辺りが牛の専門家が馬を診るのを嫌う一番の要因だと思う。

少しでも馬を診てくれる牛の専門家が増えてくれること、そして一頭でも多くの馬の病気が治ることを願ってここに載せる。

↓効能書きに馬が記載されている薬の一覧

※例え効能書きにあっても副作用などに注意が必要なので馬の様子を見ながら慎重に投与するのが原則。
効能書き通りに治療に使う場合、基本的にNOSAIの保険給付になるらしい。

注射薬
Fは自分も使ったことのない薬
Eは条件付きで使う要注意薬


内用薬




↓よく使う順に並び替えたものversion

これに載っている薬で9割以上カバーできると思うのでこちらの方が実践に即したものになっている。
人体薬や馬以外の動物薬の効能外使用も、慣例的にもしくは海外での報告に基づいて当たり前のように使われている場合もあるが、安全性AMR対策食の安全には特に注意が必要それから競走馬であればドーピングにも注意が必要。競馬場に移動してすぐにレースにでることはほとんどないと思うので、競馬場外ではそれほど気にしなくてもいいと言われているが、マイシリンやペニシリンGに含まれるプロカインや、局所投与したステロイド剤や鎮痛薬は10日間以上前の投与でもドーピング検査でひっかかる可能性があるとも言われている。


 一覧表といってもかなり主観の入ったものだし、どこか間違えているという自信がある
最終確認は効能書きに記載のあるものは効能書きを、人体薬や効能外使用は文献を調べて各自行ってほしい。

また、具体的な抗菌剤や駆虫薬の使用計画は既に雑誌やHPに載っていると思う。


7並べに勝つコツは相手の手札を読み、戦略的にパスをすることらしい。
翻って考えてみるに、馬の薬もはじめから効きそうな薬をまとめて根拠もなく使っていると、何が効いて何が効いていないのか判断できなくなり、次の一手が打てなくなってしまう。そうならないように、最低限の薬を使い馬の変化を見ながら次の一手を打っていくというあたりは7並べと同じかもしれない。

2019年4月29日月曜日

ダニ


公共牧野の仔馬の元気がなく下ろしてきた、とのことなので見に行ってみるとコイツが。

ダニ!(マダニ?)

血を吸ってパンパンになると落ちてくる。よく見るとうにうにと足を動かしているが腹が重くて歩けていない。
それでいいのか?とダニアレルギーの自分ですら逆に心配になるが、ヤツらを侮ってはいけない。

青森県の家畜保健所によると、ダニの多数寄生が原因で仔馬が衰弱死した例があるという[1]。

どれどれとお腹の下をのぞくと


多数寄生している!しかも現在進行形で血を吸っている。
貧血対策の鉄剤投与と一緒にとりあえずエクイバラン経口投与。で、翌日にはぽろぽろ落ちて仔馬も快方に向かった。

青森県の寒立馬ではフルメトリン製剤を2分の1に薄めたもの(何で?)を皮膚にかけることでダニ駆除をしているそうだが[1]、皮膚の厚い牛用に作られた薬は馬では皮膚への刺激が強すぎる可能性があり注意が必要と思う。

それで今回は安全面を考えエクイバランを使った。回虫や円虫等の「内部寄生虫駆除薬」ではあるが、血中の円虫にも効果があるということは血を吸う外部寄生虫にも効くかもしれない。青森の例でも実はフルメトリンと一緒にエクイバランの経口投与もしている。

どの薬がダニに効いたのかはわからない。というか、どの薬も効いてるんじゃないかとも、どの薬も効いてなくてただダニがお腹いっぱいになって落ちただけなんじゃないかともとれる。
わかっているのはダニのいないところで飼ってあげるのが一番ということ。

ここで回文をひとつ
鹿山のリスク 馬ダニだ 舞う 薬のまやかし

エクイバランも経皮投与の内外部寄生虫薬(アイボメックトピカル等)も成分はイベルメクチンだ。
この名前は聞いたことのある人も多いと思う。大村博士が2015年ノーベル賞に選ばれる最大の理由になったのがこのイベルメクチンだった。
大村博士はこの薬で年間3億人を寄生虫病から救っていると言われている[2]。平成の北里柴三郎もしくは平成の野口英世とも呼ばれる大村博士。次の千円札の肖像はもう決まりか?

[1] 平泉美栄子, et al. 寒立馬における地域一丸となった衛生対策. 平成27年度獣医学術東北地区学会発表演題

[2] 大村智氏、風土病薬「イベルメクチン」を実用化 アフリカで失明の危機を克服、効果劇的、産経ニュース

2019年3月17日日曜日

助産 3つのルーチンと3つのNG


・引っ張るだけが助産じゃない
胎子の肢にロープをかけて引っ張る。助産というとこのイメージかもしれない。しかし、本来「押し出される」はずの胎子を「引っ張りだす」ことは、胎子と母体にとても大きな負荷をかけている。牽引による助産は子牛・子馬の活力を低下させ、免疫の移行にも悪影響があることがわかっている[1,2]ので、むやみな牽引は避けたい。むしろ本当の助産とは、引っ張らなくてもいいようにすることだと言える。
難産の発生率は多めに見ても初産牛で15%、経産牛で5%、馬で10%と考えられる[3,4, 5]。それ以上に牽引している牧場や、お産の死亡事故が5%を超えている牧場は、助産の方法を見直すことを考えてほしい。



・3つのルーチン
そこで、助産の3つのルーチンとしてもらいたいのが①緊急時を見越した準備、②発信履歴での時間管理、③潤滑剤を胎子に塗りたくる、だ。
①助産は誰もが慌ててしまうもの。引っ張る余裕がある所に移動させたり、胎水を吐き出させるために逆さ吊りにしたりする準備は先にやっておかなければならない。
②袋が破けて胎子の尿がでてくる第一破水や足胞出現からの時間は、助産や往診依頼の判断に重要。携帯電話は発信することで時刻つきの履歴が残るので、記録に活用できる。
③第二破水後であれば、アルギン酸ナトリウムや石鹸などの潤滑剤を胎子に可能な限り塗りたくる。これは産道との摩擦を減らすだけでなく、手の物理的刺激による産道の拡張やとにかく触ることで胎子の姿勢の詳細がわかってくるという効果がある。

・3つのNG
逆にやってはいけないのは①一人での助産、②足だけでの逆子の判断、③一方向からのみの牽引、だ。
①一人での助産はアクシデントがあった場合に人・家畜ともに危険を回避できない。
②また、蹄の向きや関節の曲がり方での判断は熟練者でも間違えることがあるので、逆子の判断は必ず尻尾で行う。
③そして一番最後に、するリスクとしないリスクを天秤にかけて牽引の判断をするのだが、左右の足を交互に引っ張ったり、引っ張る方向を上下左右に変えたりすることが大切だ。

1. 杉本仁美, et al. 乳牛の分娩において牽引の程度が新生子牛の活力, 血液ガス, 血清 IgG 濃度に及ぼす影響. 産業動物臨床医学雑誌, 2011, 2.1: 14-19.
2. JRA育成牧場管理指針
3. 乳牛の難産 : 原因,予防,助産および失位整復法 石井
4. 蔵書4
5. 山内亮. 最新家畜臨床繁殖学最新家畜臨床繁殖学, 1998.

2019年1月5日土曜日

馬の凍結精液

競馬先進国となった日本だが、馬術については欧米に追い付いていない。
2018年のアジア大会・世界選手権パラにおける馬場・障害・総合での日本勢の活躍は、東京オリンピック・パラリンピックにむけて期待が膨らむものだった。しかし、まだまだ馬術が日本に浸透しているとは言えない。
何より競技馬の生産が足りない。

生産頭数も足りなければ生産技術も足りないのだが、今後変わっていくはずだ。
平成29年にフランスからの凍結精液の輸入が解禁された。牛の品種改良を見ればわかるように凍結精液による人工授精(と受精卵移植)が改良の効率化に与える影響は大きい。
現在は日本でごくごく一部(2か所?)でしか作られていない凍結精液だが、今後普及していくだろうと思う。
人工授精の精液注入方法については前回の投稿を参照。


馬精液のストロー凍結方法は日本家畜人工授精師協会の本によると

グルコース、ラクトース、ラフィノース、クエン酸Na、第2リン酸Na、酒石酸カリNaの水溶液に
卵黄を添加した液の上澄みにペニシリンGカリウムとストレプトマイシンを添加した希釈液(HF-20-A液)を精液に加えた後、1500rpmで遠沈させ上澄みを除去。
沈殿精子に再び希釈液を加え5℃に冷却したら、HF-20-A液にグリセリン10%を添加した液(HF-20-B液)等量を点滴などで徐々に添加しストロー(牛用)に封入する。
ストローは液体窒素液面上3~5cmの位置において凍結させる。

等々書かれているが、今後改良されていくと思うので詳細は割愛。

凍結精液ストローの融解法も同じ本に

「35~40℃の水にストローを投入して速やかに融解する。1授精当たり6~10ストロー分の精液を融解し、これに30℃に温めたHF-20-A液を加えて20ml前後にして授精に供する。」

と載っているが、おそらく今後は牛用のモ5号やYTガンもしくはIMVやminitubeで扱っているような深部注入カテーテルに融解したストローをそのまま入れる方式にかわっていくと思う。ちなみに融解後の希釈液は岩手県ではスーパーマーケットの牛乳コーナーに普通に売られている小岩井の無脂肪牛乳でも全然大丈夫。他県では手に入れにくいらしいが。

凍結精液の受胎率向上には、凍結手技や授精手技の向上に加え、そもそも個体差が大きいとされる精液の耐凍能による種雄馬の選別が必要と考えられ、そう簡単に普及させられる代物ではないのだが、馬関係者の一層の奮起によって競技馬生産を欧米並みに引き上げるチャンスを今掴むべきだろう。

参考文献
馬人工授精マニュアル 日本家畜人工授精師協会
Allen WR, Antczak DF : Reproduction and modern breeding technologies in the mare, The Genetics of the Horse, Bowling AT , Ruvinsky A,307-342, CABI, Cambridge(2000)

2017年12月27日水曜日

捻転去勢

ついに雑誌「家畜診療」において「牛の捻転式去勢」が日本語の活字となった(2017年12月号)。

牛の両側同時捻転
右上のまっくろくろすけみたいなのは横断された陰嚢のさきっちょ

詳細は伏見先生(シェパード→Guardian)が述べられているとおり。
実際の手技に関しても伏見先生の動画や豆作先生(十勝NOSAI)のblogで見ることができる(家畜診療誌の一部も)。
こちらでもたくさんやっているわけではないが、豆作式捻転棒を使ってやらせてもらっている。

この手技は馬のHenderson castration instrument(ヘンダーソン式捻転去勢法)がもとになっている。解放去勢法(結紮式)に比べて過度の出血や炎症反応などの合併症が少ないと報告されている[1-3]。

なので馬でもやっている。馬の場合は全身麻酔下で陰嚢縫線を縦に小切開し、そこから結合織を鈍性剥離して片側ずつ行う。重種馬(輓馬)はできないことはないが、結合が強く捻転棒が曲がってしまうので注意。

仰臥位でのサラブレッドの手動捻転去勢(野外では横臥位で行う)

精巣挙筋もちぎれて痛そう。局麻もしたほうが良いかと。

さて、問題は陰嚢の解剖学だ。去勢を行っている人のうち、はたしてどれくらいの人が陰嚢を正確に理解しているのだろうか。

家畜診療誌の図の原図([4]より)
※外精筋膜(外腹斜筋の続き)と精巣挙筋膜(内腹斜筋の続き)の位置がやや怪しい

この図を見てわかった気になってはいけない。この図はあくまでも一方向からしか見ていない模式図でしかない。
もっといろいろな模式図を見てみると・・・

カラーアトラス獣医解剖学より

manual of equine field surgeryより


まず牛の"陰嚢の横一文字切開"は皮膚・肉様膜に加えて外精筋膜や陰嚢間膜・陰嚢中隔も一緒に切断していることがわかる。牛の場合腹壁の筋間に当たる部分(精巣挙筋膜?)の結合が疎になっていて、切開時に総鞘膜の外にあたかも空間があるかのように感じられるようだ。一方、牛でも馬でも陰嚢縫線から鈍性剥離していく方法では外精筋膜のあたりを剥離しているようで、その疎な部分まで開けていない様に思う。
解放結紮式では総鞘膜のうちの壁側鞘膜を切開している(臓側鞘膜も切ってしまう時もあるが)。人と違い家畜では鞘状腔は終生を通じ鞘状管で直接腹腔と連絡する[4]ためこの方法では開腹しているといっても過言ではなく感染による腹膜炎のリスクが高いことがわかる。

次に、捻転している部分は精巣にくっついてきている部分なので、前者なら腹膜の続きの総鞘膜とそれに合体している横筋筋膜(腹横筋の続き)の続きの内精筋膜、後者なら内腹斜筋に続く精巣挙筋膜も、もしかしたら外腹斜筋に続く外精筋膜も捻転しているかもしれない。
その場合、内腹斜筋は深鼠径輪の一部であり外腹斜筋は浅鼠径輪の一部であるから、ねじ切れ方が少し変わってくるようにも思うが、いまのところどちらも問題は起きていない。

おわかりいただけただろうか・・・、阿保ほど複雑なことが。
なので、頭がこんがらがったら発生段階から追っていった方がわかりやすい。

[4]より精巣下降の様子
これだと鼠径輪がわかりにくいが、前述のように鼠径輪は外腹斜筋や内腹斜筋およびそれにつづく筋膜からできているのをここまで読んできたあなたはイメージできるはずだ

そして、百聞は一見にしかずならぬ百模式図は一見にしかず。youtubeで腹腔内潜在精巣の去勢手術が見られる。
クッキー動物病院のblogより

画面左下に伸びているのが血管、右下に伸びているのが精管、右上に伸びているのが精巣導帯のように見える。また、膜で腹膜とつながっているのも見える。腹腔内精巣と言っても腹腔の中にむき出しでいて自由に動き回っているわけではない。イメージが固まれば潜在精巣の探索にも役立つ。

養老孟司は「バカの壁」の中で『知るということは根本的にはガンの告知だ』『君たちだってガンになることがある。ガンになって、治療法がなくて、あと半年の命だよと言われることがある。そうしたら、あそこで咲いている桜が違って見えるだろう』と話している。
次に去勢をするときに今までとは違う景色が見えたらなら、あなたは陰嚢を知ったということだ。

参考文献
4. 蔵書3

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