馬の性周期における血中ホルモン濃度の変化
本格的な馬の繁殖シーズンが到来する前に基本的なところをおさらいしたい。
馬は日が長くなってきたことを視覚で感じることによって繁殖機能が活性化される。これを長日性の季節繁殖動物という。具体的には日本では3月ごろから性周期が回り始める。
この性質を利用してライトで照らすことで人為的に春を作ることもできる。冬至ごろから1日が14.5時間の明期と9.5時間の暗期となるように馬房にライトをつけることによって、通常よりも1か月半ほど早く初回排卵をおこさせる方法(ライトコントロール)がサラブレッドでは普及している。
発情と排卵の仕組みを噛みくだいて記すと(本当はもっと複雑で神秘的)
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まず脳下垂体から分泌されるFSH(卵胞刺激ホルモン)によって卵巣で卵胞が発育する。
卵胞からはE(エストロジェン:卵胞ホルモン)が分泌される。このEが女性ホルモンであり、発情状態を作る。
さらにEは下垂体からのもう一つのホルモンであるLH(黄体形成ホルモン)の分泌を促す。
LHは卵胞を発育+排卵させる作用がある。排卵した卵胞は黄体となる。
黄体はP(プロジェステロン:黄体ホルモン)を分泌し発情関連のホルモンを抑制、非発情状態をつくり妊娠の準備をする。
妊娠した場合はそのまま黄体期がつづくが、妊娠しなかった場合は徐々に黄体が退行し、再びFSHの分泌が始まる。
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この★に挟まれた部分は概ね他の哺乳類と同じである。
そして1周期が21日なのは牛と同じ。
では何が違うかというと、発情期が1週間と長いことと、LHの上昇が排卵前の一過性のもの(LHサージ)ではなく排卵前後1週間に渡って上昇がみられるということ。
馬の特徴である1週間に及ぶ長い発情と発情終了の24時間前におこる排卵は、このホルモン支配が惹き起こしている。
この"1週間続く発情の終了24時間前に起こる排卵"というのが、馬生産現場の人々の頭を6000年間悩ませ続けている。
というのも後述する精子の生存期間と卵子の受精可能時間との関係と相まって、交配適期もしくは授精適期の判断が他の家畜と比べて格段に難しい。
交配・授精適期については次回
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