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2018年7月9日月曜日

馬の採精と精液処理


繁殖シーズン前の復習に始めたこのシリーズだったが、気づけばほとんどもうシーズンは終わってしまった。来年のための予習としたい。

馬の採精は雌馬もしくは擬牝台に種雄馬が飛び乗ったところで、陰茎を人工膣に誘導することで行われる。

偽牝台や人工膣にはいろいろな種類があるが、偽牝台は馬の輪郭を模造する必要はなく、馬と人の安全が第一に作られたシンプルなものが多い。人工膣は筒形のゴムを太いアルミ製の外筒の中を通して両端を外筒の外側に折り返すことで、ゴムと外筒の間に温水を入れて膣内の温度と圧力を再現している。重要なのは中の水を41~43℃に調節することだ。

人工膣の外筒

中のゴム 

装着後

細いほうに精液が入る袋を付ける

採取した精液は室温(20℃ほど)でガーゼで濾してゲル状の膠様物を取り除く。
流動性・色・精子濃度・前進運動率でこれを評価する。活力測定には顕微鏡に熱テーブルを付けて37℃に設定する必要がある。


1回にとれる精液の量は5mlだったり150mlだったり個体差や日差でいろいろだが、これを希釈することで一回の射精で複数の繁殖牝馬に種付けできるようになる。
希釈液は日本では牛用のものを流用したり、市販の無脂肪牛乳をつかったりいろいろだが、いずれにせよ同じ温度にすることとpHを安定させること、精子に必要なエネルギーを保つ物質が含まれていることが大切のようだ。

一応希釈の際に使う式があるのだが、要するに総精子数に前進運動率をかけた有効精子数が設定する数になるように希釈するということ。
有効精子注入数は新鮮精液なら最低で3億、できれば6億ほど欲しいといわれている。凍結精液では有効精子が8億かつ、解凍後の前進運動精子が35%以上が最低でも必要といわれる。

理想的な希釈率は最終的な希釈により1mlあたりの有効精子(前進運動精子)が2500万と本にある。なのでこれを固定とすれば、例えば取れた精液が45ml、密度1.45億、前進運動60%であった場合には、総精子数(6.525)×前進運動(0.6)を最適密度(0.025)で割って156.6mlとなる。
有効精子注入数を1頭につき6億と設定すると、2500万/mlなので注入量は24ml。
よって6頭の牝馬に人工授精できる。

希釈率や有効精子注入数は変えることができる。深部注入などによって5000万ほどの有効精子数でも安定して妊娠させることができるlow-dose insemination法が欧米では研究されている。

精液の注入法については次回。

参考文献
馬の人工授精の理論と実践 E・クルーク、H・ジーメ
日本馬事協会出版 第5版?

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